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1988年9月 「おい、梅田。 ちょっといいか?」 田辺課長から呼ばれた。 「はい。」 【あれ? ・・・・・? 俺、なにか、へまでもしたかなぁ・・・・・? 田辺課長から、怒られるようなことしたかなぁ・・・・・?】 普段、田辺課長はわざわざ別室でミーティングをしたりしない。 俺は、身に覚えがないのだが、「他の人の前で、叱り付けるわけにもいかないから、別室で、マン・ツー・マンで怒られるのだろう」、と覚悟した。 応接室で、田辺課長が神妙な顔をしている。 「梅田。 ご苦労だったな。 転勤だ。」 「えっ?」 「帰国命令だよ。 ナガノお勤めご苦労さんです、ってとこかな。 ニューヨークの島送りから、江戸に戻れるぞ。 ハハハ・・・・・」 「えっ? 本当ですか? 冗談じゃなくって?」 「ああ。 本店の為替資金部だ。」 「・・・・・。」 「俺よりも後から来て、先に帰っちゃうんだなぁ・・・・・、梅田は・・・・・。」 「・・・・・。」 突然の転勤だった。 ニューヨーク支店から東京・本店の為替資金部への人事異動だから、帰国命令になる。日本国内の転勤は2週間以内に新しい勤務地に赴任しなければならないが、日本から海外へ行く場合や、海外から日本へ戻る場合はもう少し余裕を見てくれる。そうは言っても、常識の範囲内だから、ぐずぐずしていることも出来ない。 海外に赴任している場合、そろそろ転勤になりそうだとか、うすうすわかるものだと周りから聞いていたから、まったくびっくりした。 最近は、海外赴任の期間も長くなっていて、5年前後が多い。 俺はまだ、3年しか経っていない。 予想もしていなかった。 「フェアウェル・パーティー(Farewell Party)は、エイドリアンに任せるぞ。 それでいいよな?」 「はい・・・・・。」 ![]() ![]() フェアウェル・パーティーは、いつもの「レイディース(Reidy’s)」だった。 「レイディー」は、「貴婦人・淑女」の意味ではなくて、人の名前だ。 もちろん“R”と“L”の発音が違っているのだが、「レイディーさんの店」と言う意味だ。 「レイディーさんの店」は、うちのディーリング・ルームがあるビルの3階のショット・バーで、よくここで飲んだ。 エイドリアンが張り切って、仕切っている。 今日は「レイディース」を貸し切りにしているようだ。 ディーリング・ルームのメンバーに限らず、入れ替わり、立ち代り支店の人たちが挨拶に来てくれた。 その度に、乾杯のビールを飲まされるものだから、酔いが回る。 お世話になった、ブローカーさんや、ディーラー仲間も遅れてやってきた。彼らのオフィスはダウンタウンのウォール・ストリートにあるから、5時には間に合わないのだ。 |
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